「ミルトス友の会」第1回集い

2005年4月21日(於:学士会館) エリ・コーヘン駐日イスラエル大使講演

日本とイスラエル──始まりつつある様々な協力関係


駐日イスラエル大使 エリ・コーヘン


これは何だと思いますか?(=下写真)私はいつもこれを持ち歩いていて、小泉首相にもお見せしたものです。

カプセル

これはフラッシュ付きのビデオカメラで、ラジオコントロールのカプセルです。
これができた経緯はこうです。
ある会合で、2人のイスラエル人科学者――1人は医者でもう1人はロケットの開発者――が夕食会で同席したときのこと。医者がロケット開発者に向かって言いました。

「あの広い宇宙から地球の様子を写真で送信できる技術があるというのに、なぜ身近な人間の体内の写真を撮影することができないんだ?」
ロケット開発者は、しばらく考えていました。「わかった。オレに考えがある。明日また会おう」。これが事の始まりでした。そして、彼が考えに考え抜いた末に発明したのがこの「ロケット」です。これは、人体の中を撮影するための「ロケット」なのです。
このイスラエル人の創造力が、日本と融合すればもっと大きなことができるはずです。

私が「日本イスラエル商工会議所・関西本部」の会に参加した時のこと。その会には、生物科学部門で最近ノーベル賞を受賞したイスラエル人のチェハノバ教授が出席していました。彼が会のメーンスピーカーでした。

私は彼に尋ねました。「私は大使に赴任する前から、長年、武道に携わってきたので日本との関係がありますが、あなたは今回なぜ欧米でなく、日本に来たのですか?」
すると彼は答えました。「私は何も今回の講演のために、特別に日本を選んで来たわけではありません。ここ大阪大学の研究者とは、もう十年来のお付き合いです。その研究レベルはもちろんのこと、彼らとの人間関係においても、私にとって、ここが世界で一番恵まれた環境なんですよ」

このように研究分野において、文化面で、また政治の世界において、この二つの民族が融合することにより、より多くの繁栄をもたらすことができると、私は信じています。この関係が深まることにより、今まで考えもつかなかったような発明が生まれるはずです。日本にもイスラエルにも豊富な知恵、知識があります。このすばらしい知識が出会う機会を設けることが、大切だと思うのです。

■共通の三つの要素

では、この二つの民族の深い関係について少しお話しします。
ユダヤ教では、イスラエル民族を支える枠は三つの要素から成り立っていると言われます。また「その三つを結ぶ紐は、すぐに切れることはない」とユダヤの格言は言います。

その一つ目の要素は、「イスラエルのトーラー」です。これは「伝統」と呼ばれるすべてのものを指します。それは聖書であり、ヘブライ語であり、神です。二つ目は、「イスラエルの民族」。それは自分の親族であり、世界各国から帰還した同胞も含まれ、それらすべてが一つとなったときに大きな家族としての「民族」となります。顔形は多少違っていても、一つの民族として結ばれます。そして三つ目は「イスラエルの地」です。二千年間願い続け、現在、国家として存在しているイスラエルの地。この土地との関係は、アブラハムの時代にさかのぼります。

イスラエル民族が本来の民族たり得るのは、この三つの要素が存在し続けているからです。このうち一つでも欠けてしまうと、物理的に、また精神的に民族を支えている枠は溶解してしまいます。

そして私が日本民族を見るときに、この三つの要素と非常に良く似たものを見いだします。第一の「トーラー」にあたる要素は、日本においては天皇、日本語という言語、武士道、またその土台をなしている神道。これら精神的な要素を合わせて根元的に日本民族を一つとするものがそれです。二つ目は日本民族です。日本民族にもあらゆる部族がありますが、民族の独自性を固執してきました。また、日本民族は幸いなことに、今まで自らの土地を失うことはありませんでした。時には日本の領土とアイデンティティを守るために、武力をもって立ち上がりました。これが三つ目の要素、日本の土地です。

講演するコーヘン大使
【講演するコーヘン大使】


■その他の類似点

私は武道に携わって三十五年になります。時には一日に六~八時間稽古することもありますが、毎日最低二~三時間は稽古しています。ですから、私は確かに〝ガイジン〟ですが、日本人の民族性については少しは理解しているつもりです。私はこの日本を外から、また内から見つめた上で、私たちと非常に似通った三つの要素を発見したのです。

私たちの聖書には「白髪の人の前では起立し、長老を尊びなさい」(レビ19・32)と書いてあります。これは、年上の方を尊敬するということが非常に大切であるという、日本と同じ価値観です。また、日本ではお母さんが家庭において子供の教育の責任者であり家の総責任者である、と聞きます。ユダヤお母さんもまったく同じで、お母さんが家庭の責任者であり〝家主〟です(笑)。

また、ある会合でこんなことを聞かれたことがありました。「イスラエルのような、水が十分になく砂漠など土壌も良くない条件で、どのように農業を営み自給しているのですか? それどころか、ヨーロッパやアメリカ、日本にまで輸出していますね」と。
ユダヤ人というのは、質問をされたときにその答えとして質問で返すということをします。それで私も彼に質問で返しました。「第二次世界大戦後、日本は鉱物もなければ天然資源もない中、どのようにして経済的にあらゆる分野で世界の一、二位を争うほどの大国に成長したんですか」と。

この二つの問いに対する答えとしては、先程申し上げたように、それぞれの民族にしっかりとした「三角」の基盤があったからだと思います。それに加えて、一人一人が社会の一員として、民族の一員として各々のベストを尽くし、責任を負って行動し、社会に貢献したからです。その貢献度は人それぞれだったとしても、各自が民族へのつながりを強く感じていたということが重要だと思います。

イスラエルと日本は遠く離れてそれぞれ発展してきましたから、一見違いを感じる部分もあります。例えば、人の振る舞い方。イスラエル人は、辛抱強くありません。またキッチリと計画せず、いろいろなことを即興でやります。これは日本人とまったく逆に見える部分ですね。ビジネスの世界でもイスラエル人と日本人が出会う場合、最初はなかなかとけ込めません。しかし、ある程度親しくなって心が通じるような仲になれば、内面は非常に似ていることに気付きます。

■経済界での成果

日本とイスラエルの関係において、その未来を展望するならば、私たちは今あらゆる分野において、将来的に画期的な成果をあげるであろう素晴らしい道のりのスタート地点に立っている、と私は感じています。

具体的な成果としては、4月13日に開催された「日本―イスラエル・ハイテク・ベンチャーキャピタル」があります。ホテル・ニューオータニでITやバイオテクノロジー、ナノテクノロジーなどの分野で活躍するイスラエル企業が約70社来日しました。
そして企業間での交流をするため、日本の会社に参加を募りました。最初、私たちは100~200社ほどの日本企業が参加して、情報交換やビジネスにつながればいいと思っていました。しかし実際に応募し始めますと、予想を大きく上回る反響があり、本番の一週間半前には受付を終了せねばならない事態となりました。合計約470件、日本企業からの申し込みがあり、最終的に約500の日本企業がニューオータニに集いました。

私もその会に参加しましたが、様々なビジネスが始まりつつあるのを見ました。すでにイスラエルへの視察に行きたいと言っている日本企業や、日本に視察団を送りたいと言っているイスラエル企業があります。両国の経済分野において、大変強い結びつきが始まりつつあります。小泉首相や中川昭一経済産業大臣ともお会いしましたが、お二人とも「今まで、海外の企業が日本に来ていろいろな会合を開いたのを見たけれども、これだけ多くの日本企業が積極的に参加している会は初めてだ」と驚いておられました。

ベンチャーキャピタルの会
【ベンチャーキャピタルの会】


■イスラエル〝大使〟と日本〝大使〟

本日、4月21日付けで、日本外務省が公表するイスラエルに対する危険度が、レベル2「渡航の是非を検討して下さい」からレベル1「十分注意して下さい」に引き下げられました。これは日本政府のイスラエルへの信頼が上がった証拠で、画期的なことです。

これに関しては、もちろん私たちも努力はしましたが、ひとえに駐イスラエル日本大使の横田氏のご尽力によるものです。なぜなら横田大使が最終的に日本政府に打診し、その責任を負うことになるからです。また、この提案を受けてくださった、外務省の中東アフリカ局局長の吉川氏の存在も忘れてはなりません。私たちは深く感謝しております。

そして、これが政府間レベルの事柄で終わるのでなく、国民レベルの草の根的な広がりとなっていくことを私は願っています。より多くの日本の方にイスラエルにお越しいただき、より多くのイスラエル人が日本に来ることができるように、希望するものです。

本年一月には、日本の国会議員七名と経済界のリーダー六名で構成された視察団が、イスラエルを一週間訪問しました。各界のイスラエル人との交流もありましたが、イスラエル観光もしました。先日も同じメンバーで大使館に集まり、イスラエル視察を振り返って会合をもったのですが、皆さん口をそろえて言われます。「イスラエルの素晴らしさは、実際に足で歩き、肌で触れてみないとわからない。まさに百聞は一見にしかずだ」と。そして、ぜひもう一度イスラエルに行きたい、ともおっしゃっていました。

七人の議員は「私たちは『七人の侍』ですね」と言われましたので、私は「いや『七人のイスラエル大使』ですよ」と申し上げました。これは政治家だから申し上げるのではなく、イスラエルを訪問される日本人は、誰でも〝駐日イスラエル大使〟となって帰られます。そして日本を訪問するイスラエル人は、皆〝駐イスラエル日本大使〟となるのです。

■日本が中東和平にどう貢献するか

政治のことについて少し。私や大使館のスタッフは、毎週のように日本の議員と会っています。私たちはメディアをあまり信用していませんので、自分の足で出向いていろいろお話をし、説明をします。

小泉首相は現在、中東和平により積極的に関与しようとしています。小泉首相と会談した際に、イスラエルのシャロン首相を日本に招待した旨を伝えてくれました。まだ確定ではありませんが、5月の終わりか6月中に実現すると思います。小泉首相は「日本は、欧米とは違う形で、中東和平に協力できると思う」とおっしゃっていました。

日本が中東和平に貢献できる理由については、二つあります。一つ目は、イスラエルもパレスチナも日本に敬意を表していること。日本国は現在、イスラエル民族とアラブ民族に対しては、ニュートラルの立場を取っているからです。そして二つ目は、日本は当地から遠い場所に位置するため、直接的な影響が発生しないこと。ゆえに、あらゆる提案は両者に歓迎されると思われます。
そしてこれは私の予測ですが、日本はアジア地域において、非常に強い影響力を持っています。日本がイスラエルと良い関係を結べば、他のアジア諸国もイスラエルと良い関係を結ぶことになるでしょう。

私は小泉首相にこうも申し上げました。
「私は〝半分〟日本人で、100%イスラエル人ですので、私のこの〝150%〟をもって、日本は中東和平にどのような援助ができるか、提案できると思います」

現在、イスラエル大使館として、四つの提案を提出しております。そしてこれが承認されて、首相官邸と外務省に行きました。この提案には強制力はありませんが、この「たたき台」をもとに、中東和平について良い案を出してくださることを信じています。皆さんも、これから日本が中東和平により大きく関わっていくことを、ニュースや新聞などでご覧になることでしょう。 

講演後、親睦会にて「種入れぬパン」を祝福するコーヘン大使
【講演後、親睦会にて「種入れぬパン」を祝福するコーヘン大使】

Eメール:pub@myrtos.co.jp
TEL:03-3288-2200 / FAX:03-3288-2225(「ミルトス友の会」係まで)