へブライ語聖書対訳シリーズ18 『列王記下1』
SBK-108 [ISBN978-4-89586-221-9]
DETAIL
へプライ語聖書対訳シリーズ18 『列王記下1』
ミルトス・ヘブライ文化研究所 〔編〕
列王記下1〜13章を収録。預言者エリヤの後を嗣いだエリシャの活躍の全てが収録されています。
へブライ語聖書対訳シリーズ
――刊行の言葉――
聖書は日本においても隠れたベストセラーとして、これまで幾多の邦訳聖書が刊行され、読み継がれてきた。さて、聖書というとき、原典はギリシア語で書かれた新約聖書と、ヘブライ語で書かれた旧約聖書(一部はアラム語)より成り立っている。その翻訳の歴史は、古くは聖フランシスコ・ザビエルが1549年に持参した邦訳『マタイ伝』の一部にさかのぼるといわれ、最近では1987年に新共同訳が完結した。先人たちの努力による、翻訳という大変な難事業を通して、聖書への道が我が国にも拓かれてきたのである。
ただし、聖書に限らず、一般の文学や古典にも当てはまることだが、翻訳を幾種類か読み比べるとき、だれもが戸惑う経験がある。それは、あたかも異なった原文から訳出されたかのような意味合いを持つ翻訳箇所に、しばしば出会うことである。しかし、いかに立派な翻訳であっても、翻訳が原典のもつニュアンスをすべて、また正確に伝えるのは不可能に近い。
すでに、紀元前2世紀に書かれた旧約聖書外典の『シラ書』が、次のように語っている。
「我々は、懸命に努力したのであるが、上手に翻訳されていない語句もあると思われるので、そのような箇所についてはどうかお許し願いたい。というのは、元来ヘブライ語で書かれているものを他の言語に翻訳すると、それは同じ意味合いを持たなくなってしまうからである。この書物だけではなく、律法および他の書物でさえも、いったん翻訳されると、原著に表現されているものと少なからず相違してくるのである」
したがって、熱心な読者がより深い理解を求めて、翻訳から原典に直接触れることを望むのは、しごく当然であろう。もちろん、原典への道は容易ではない。とりわけ、ヘブライ語のような馴染のうすい古典語で綴られた旧約聖書の場合、原典講読はごく少数の専門家のみに限られてきた。しかし近年、邦訳聖書の普及と聖書への関心が高まるのにつれて、一般の人々の間にも旧約聖書原典そのものに親しみたいとの要望が上がっている。
幸いにもユダヤ人によって再建された国、イスラエルにおいて、その言語も復活されたことは、言語学史上奇跡的な偉業と見られている。その結果、現代語から入って聖書ヘブライ語を身近なものとして学ぶことができるようになった。編者らはその恩恵に浴した一人一人である。
ここに、小社は、日本の聖書を愛する方々に、(そして必ずしもヘブライ語を正式に学んだことのない人も近づけるような)旧約聖書の原典への道を提供したく、原文の逐語訳を試みようと、『ヘブライ語聖書対訳シリーズ』を企画した次第である。
もとより、翻訳の場合と同様、逐語訳においても「唯一で決定版」というものはありえない。本書は日本初のインターリニア聖書でもあり、非学非才の編者は出来映えの甚だ理想に遠いことを承知している。これが一つの叩き台ともなり、さらにより良き類書の出現するのを期待したい。しばらくは、このささやかな試みが、聖書を愛読する方々の渇望をいやすのにいささかでも役立つならば、望外の幸せである。
終わりに、本書の企画に対して温かい理解を示し、「新共同訳聖書」の使用を快諾し、ヘブライ語原典BIBLIA HEBRAICA STUTTGARTENSIAの使用許可の労を執って下さった日本聖書協会に対して、心からなる感謝の意を表したい。
ミルトス・ヘブライ文化研究所