中東を動かす帰属意識 ―― 近くの隣人より遠くの血縁
林 幹雄〔著〕 塩尻和子〔解説〕
◆世界を目指すビジネスマン、中東研究者必読の書◆
日本人にはなじみが薄く、誤解と偏見に満ちた情報が伝えられる中東世界。しかし、近年中東は大きく変化している。その象徴が、イスラエルと国交正常化に向かうアラブ諸国の姿だ。今後の世界を読み解いていくうえで、中東への理解は必須となるだろう。
著者は、中東各国に数十年駐在し、ビジネス経験を積みながら、独特な商習慣、文化、歴史、社会など中東世界をつぶさに研究し続けた。その中で見えてきたのは、中東に生きる人々の帰属意識は「国家」ではなく「部族」にあるという事実だった。
「部族」がわからなければ中東は理解できない。著者ならではのユニークな視点から「中東世界」を紐解いていく。
2021/2/28 産経新聞の書評に取り上げられました
著者林幹雄氏の紹介と本書発刊秘話
―― 目次 ――
発刊に寄せて 大野元裕(埼玉県知事、中東調査会参与)
第1部 部族とイスラーム
第1章 部族で構成された社会
第2章 部族社会を支える連帯と帰属意識
第3章 イスラームが興った頃のアラビア半島
第4章 交易と巡礼の道
第5章 イスラームの興りとユダヤ教
第6章 部族の統治と刑罰
第7章 イスラーム統治の広がりとシーア派
第8章 イスラームの信仰
第9章 イスラームの分派とイスラーム社会の指導者
第10章 婚姻事情と家族法
第11章 離婚のルール
第12章 来世と聖者廟
第13章 モスクの基本構造
第14章 イスラーム都市の歴史的景観
第2部 インド洋を渡った南アラビア人
第15章 海洋交易で広がったイスラーム
第16章 環インド洋沿岸域に根付いたイスラーム社会
第17章 東アフリカに進出したオマーンとイバード派
第18章 イスラーム世界の奴隷
第19章 外国人労働者の境遇とビジネス環境
第3部 宗教マイノリティと帰属意識
第20章 ザイド派の部族社会
第21章 北イラクのクルド人
第22章 クルド人とヤズィーディー
第23章 クルディスタンのヤルサン教団
第24章 イラクに根付いたキリスト教
第25章 クルディスタンのユダヤ人
第26章 湾岸産油国の対イスラエル政策の変化
用語解説
引用文献
解説 塩尻和子(筑波大学名誉教授、博士(文学))
あとがき
〔著者紹介〕
林幹雄(はやし みきお)
1956年富山市生まれ。大阪外国語大アラビア語科卒業。カイロ・アメリカン大学留学。
住友商事株式会社でマスカット、バグダード、エルビル各事務所長、住友商事総合研究所国際調査チーム長等を歴任。
株式会社オフィス・バドゥ代表、防衛省勉強会講師(2015~2020年)、日本オマーン協会理事、日本パレスチナ友好協会理事、
地域文化学会理事、イエメン企業アドバン日本代表。通訳案内士。